季のしずくー春編・ネコヤナギ2
季のしずくー春編・ネコヤナギ2
季のしずくー春編・ネコヤナギ2
 故郷の川は備中川という。
 北房の山奥、新見と北房の分水嶺から水が湧き、カルスト台地の豊永からの豊かな滝水をのみこんで備中川を形成し、山合の肥沃盆地を流れて落合というところの河口の街で文字通り旭川へ落ちている。 
 ごろた石の河川敷きに瀬と淵がくねくねと続き、ヨモギとネコヤナギが混在してところどころに中州ができていた。背がとどかない淵の水中には木の杭で囲われた石組があって、鯉、鮒、鰻、鯰などがひそんでおり水中鉄砲で捕獲しては学童は有頂天であった。夏休みの唯一の楽しみであった。
 川ニナも仰山棲んでいた。したがって6月のころの夜はゲンジホタルがうんかのように飛び交って幽玄さながらの舞台にもなった。ホタルの寝床はヨモギなどの草であり、ネコヤナギの枝であった。ことにネコヤナギを透過して、少年時代の青臭い想い出に耽っているのだ。

 
 

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