ローカル線のきらめき5-みまさかノスタルジー号5
ローカル線のきらめき5-みまさかノスタルジー号5
 沿線の快速列車駅のアナウンスはもとより各駅停車の駅名を通過する駅頭にみると、山野草探訪撮に名所探訪にあるいは山陰海釣りにのめりこんで遊奔していた往時の想い出が間欠にうかびあがってくる。
 ー金川は、賀茂円城、吉備高原、津山、奥津恩原への域圏へ
 ー建部は旭川流域から久世、阿波、津黒、湯原、蒜山への域圏へ
 -誕生寺は浄土宗開祖法然上人ゆかりの寺、おおはが西の棚田域圏へ
 -亀甲は国道181号線経由の県北、鳥取域圏へ
 -津山口は鏡野から奥津、上斎原、恩原域圏へ
  
 それぞれの風土環境で微妙に異なる面影を演出してくれている、各地点への拠点駅でもある。

 窓外に流れる水田景観は植えられたばかりの早苗で、風のなすがままに揺れ騒いでいる。田植機の駆るところもあり、姉さん被りの人たちが機械のはいれない箇所に這いつくばって手植えしている光景も陽の光に映えかがやいていた。老母の影をかさねながら懐かしい想いをあじわうのである。
 
 終着津山駅にすべりこむ姿勢で速度を変換したとき、突然制服の集団が小旗を一斉にふって出迎えてくれた。青年たちは歓声を挙げて応えカメラのシャッターをきりまくった。
 団塊の世代は、昭和初期のひとこまを映像や書物でおぼろげにすりこませているので妙な気分になった。

 ホームでは降車した人たちが記念号の顔を撮影にいそしんだ。特別に粧った顔ではないにしろ、イベントプレートを鼻に飾った列車はこれしかない、いつか展示品にならぶかもしれないと思えば単なるプレートではないので撮影しておきたい衝動に駆られるのだろう。
 ノスタルジーの沁みついた地下道をぬけ、名誉車掌長さんの見送りを受けて陽光のひろがる駅前へ出た。懐かしい美作津山の街だ。
 駅前はいささか変貌していた、というより進化しつつあった。駐車場や銅像のあった位置から裾ながく工事の遮蔽板に覆われて甚だ殺風景な様子だったが、かいま見える工事模様はローカル拠点にかなった装いにみえた。


 

 画像上:運行振動の列車内、パネルを掲げての撮影 
   下:記念切符

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