瀬戸内のいろどり1ー一本松公園4・海への回流1
 霞んで浮かぶ小豆島をながめて、船外機の小舟を南の浜で錨をおろし鰈をたくさん釣ったことがある。
 ポンポンと音をたてる焼玉エンジンの舟はいまやみあたらない。小舟はみずすましのように潮を掻いてポイントを移動していき、投てきした竿先がしなり糸ふけになると手のひらサイズの鰈が踊った。祝杯のビールを飲み釣り人は踊ったものだった。

 招かれてヨットに乗り、瀬戸本流の流れにのみこまれ、逃れようとしたらエンジンがエンスト、おりから無風状態、懐中電池の光輪のなかで機関修理しても無為復帰の音がしない、墨つぼを流したような暗闇のなかで川のような流れのなすがまま、マストの帆を下ろしランプの灯をかわりに括り他船との衝突回避、救難を合図したが闇を裂いて現れるものはまるで皆無、。暗澹たる思いがよぎり、漂流の気分に陥った。流れ流されて、下津井あたりでようやく漁船に出合い、港まで曳航してもらい命拾いしたものだった。

 夜釣りで無人島の磯にあがって、夜半巻き上げた針に派手なメバルが跳ねていたので手づかみしたら、痛烈な刺し痛みが走った。メバルならぬ背鰭に毒針をもつカサゴだった。無人の岩礁の上で釣りどころかひたすら痛みに耐えて蹲り夜明けを待つ身になった。


 小豆島の遠景をみながら、脈絡のないおもいが涌いてきたものである。

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