とんび歳時記ー青い山
 ー分け入っても分け入っても青い山ー

 放浪俳人種田山頭火の有名な句である。
 俗の世間を捨て鋭い感性の身を放浪に投じた滲みをすくいとることができる。
 高山とか、あるいは県内の山深いところでもいいが、夏秋が混在しているこのころを歩いているとこのような句が思いわいてくる。今は山が青いと表現できる端境期であって、やがて紅葉になり落葉になる前のわずかな期間の舞台でもある。
 県南の近場で手入れが疎かになった森では枝打ちもままならずに放置され、蔓の類がヒトデのようにのびて山道を塞ぐなど鬱蒼たる薄暗い森は数多くある。
 わずかな人跡を追って分け入っても草丈が膝をかくすほどになれば、長虫や人害のある虫を先ずかんがえると自ずと踵をかえすようになるのではないか。
 これ以上、林業の衰退がつづくと遠からず人里半ばはジャングル化して俳句を詠むどころではなくなるし、山越えの放浪ロマンなど夢のまた夢の青い山になる。
 
 

コメント