とんび歳時記ー百閒川のいろどり8
とんび歳時記ー百閒川のいろどり8
 夏秋混在。
 水量は落ちて、川というより処々の溜まりは湿原に変貌している。長野の深層湿原は、広く雄大で初秋のそれは緑色から枯れ茶色に変幻して自然摂理の深さを堪能させてくれるうつろいの美しさは忘れ難いものがある、その風貌の一画をきりとってみるならば、渇水期の川辺に些少ながら面影を見出すことができる。
 浮草は枯れ、蝦蟇や葦が枯れ立ち、流れをとめた水面に蒼く澄んだ空の淡い夏雲を映している。
 すっかり浅瀬になった水中にシラサギが哲学者のように棒立し、葦の根元からカイツブリがあわただしく走り、唯一流れる護岸の際でおおきな鯉が水面にひれをだして泳いでいる。
 散歩の背につたう汗をおぼえた。
 夏秋混在の短い秋なのである。
 

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